だららんのそのそのほほん日記
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お菓子はいつも通り畳んでます。
何の話だ!な方は、三日前の記事折りたたみ分からどうぞ。
発表前とか試験前って無性に遊びたくなりますよね。
誰か明日私を起こしてくれ。
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発表前とか試験前って無性に遊びたくなりますよね。
誰か明日私を起こしてくれ。
【はじめての夏休み その3】
特筆するまでもなく、今日もつつがなく商店街は平和だ。
小学生にとっては楽しい夏休みもあと一週間。一年を通した中で、子ども連れのお客さんが多いこの時期は、商店街の喫茶店が最も騒がしい時期だった。特に、ここはケーキバイキングをしているからなおのことである。
今日も、忙しく立ち回る面々。それでもこの時までは、比較的のんびりと喫茶店の従業員は日々の仕事をこなしていたのである。
ガッシャーン。
景気よく陶器の割れる音が響いて、事務所の椅子にのほほんと座っていた店長は奥からひょっこり顔を出した。
「珍しいね」
新人が入ればよく響くこの音。しかし、ここ最近は、誰一人として食器を落とさないようになっていた。表に出ていた山口君に目線で問えば、彼自身もびっくりしている。
「中村さんがやらかしちゃったみたいですね。ちょうど片づけ頼んだんですよ」
手伝ってきます、という山口くんに店長は頷く。
そのうち奥でケーキの盛り付けをしていた野中さんが、イチゴタルトがびっしりと勢ぞろいした四角い平皿を抱えて表にやってきた。
「なんか久々にすごい音が聞こえたんですけど」
「中村さんがやらかしちゃったらしいよ」
「あら、珍しいですね」
「ねぇ。中村さんは人一倍慎重なんだけどね」
店長が首を傾げると、野中さんも首を傾げ返す。
しばらくして、二人の前に現れた中村さんは、真っ青な顔をしていた。
どう見ても尋常じゃない顔色に、店長と野中さんは揃って中村さんの元に駆け寄り、彼女の背を支える。
「大丈夫かい?」
店長が問うと、中村さんは口をわななかせながら頭を下げた。
「すみません。四人分の皿とコップを割ってしまいました」
「いや、それは、今はいいんだけどね?」
「今、山口君が片づけてくれてて、私の方は奥に行ってていいって」
まぁ、その顔色なら誰だってそういうだろうね、と言う言葉を店長と野中さんは飲み込んで、とにかく中村さんを奥の事務所へと連れて行くことにした。
店長は熱い緑茶を手ずから注ぎ、中村さんを座らせた椅子の横にある事務机に置く。
「気分が悪いの?」と野中さんは中村さんの背をさすってやりながら尋ねた。けれども、中村さんは「ちがいます」とかぶりを振る。
なら、どうしたのだろうと店長と野中さんは顔を見合わせる。
「実は」と、中村さんは泣きそうになりながら声を絞り出した。
「弟がいまして」
「大変です大変です店長! 魔女子ちゃんが有馬さん以外の男連れてきてます!」
箒とチリトリとビニールを携え飛び込んできた山口君は中村さんの言葉にかぶせて言った。
一応、割れた陶器は従業員の義務として片付けてきたらしい。
が、その点をほめる余裕などあるはずもなく店長と野中さんは揃って「は!?」と声をあげたのである。
「なになになにそれどういうこと山口君」
「知りませんよ、俺は!」
野中さんに詰め寄られた山口君は、情けなく後退する。
「今すぐ調べてこないと給料カットだから! ね、店長!」
「うん、それは考慮しておこう」
「いや、どういうことっすか!」
問答無用で給料をカットされる危機に陥った山口君は、詰め寄る二人と出口を見比べて、外聞気にせず突撃質問をしに行くか激しく迷った。
けれど、それも一瞬のことだったのである。
疑問はあっさりと解決された。
「それ、私の弟だったんです!」
叫んで、わっと顔を覆った中村さんに、一同は驚愕した。
「有馬さんから魔女子ちゃんを奪うなんて! 俊の奴! 帰ったらとっちめてやる!」
夏休みも終わりに近い平和な午後。
姉の嘆きは、とある商店街にある喫茶店の事務所にこだましたのである。
特筆するまでもなく、今日もつつがなく商店街は平和だ。
小学生にとっては楽しい夏休みもあと一週間。一年を通した中で、子ども連れのお客さんが多いこの時期は、商店街の喫茶店が最も騒がしい時期だった。特に、ここはケーキバイキングをしているからなおのことである。
今日も、忙しく立ち回る面々。それでもこの時までは、比較的のんびりと喫茶店の従業員は日々の仕事をこなしていたのである。
ガッシャーン。
景気よく陶器の割れる音が響いて、事務所の椅子にのほほんと座っていた店長は奥からひょっこり顔を出した。
「珍しいね」
新人が入ればよく響くこの音。しかし、ここ最近は、誰一人として食器を落とさないようになっていた。表に出ていた山口君に目線で問えば、彼自身もびっくりしている。
「中村さんがやらかしちゃったみたいですね。ちょうど片づけ頼んだんですよ」
手伝ってきます、という山口くんに店長は頷く。
そのうち奥でケーキの盛り付けをしていた野中さんが、イチゴタルトがびっしりと勢ぞろいした四角い平皿を抱えて表にやってきた。
「なんか久々にすごい音が聞こえたんですけど」
「中村さんがやらかしちゃったらしいよ」
「あら、珍しいですね」
「ねぇ。中村さんは人一倍慎重なんだけどね」
店長が首を傾げると、野中さんも首を傾げ返す。
しばらくして、二人の前に現れた中村さんは、真っ青な顔をしていた。
どう見ても尋常じゃない顔色に、店長と野中さんは揃って中村さんの元に駆け寄り、彼女の背を支える。
「大丈夫かい?」
店長が問うと、中村さんは口をわななかせながら頭を下げた。
「すみません。四人分の皿とコップを割ってしまいました」
「いや、それは、今はいいんだけどね?」
「今、山口君が片づけてくれてて、私の方は奥に行ってていいって」
まぁ、その顔色なら誰だってそういうだろうね、と言う言葉を店長と野中さんは飲み込んで、とにかく中村さんを奥の事務所へと連れて行くことにした。
店長は熱い緑茶を手ずから注ぎ、中村さんを座らせた椅子の横にある事務机に置く。
「気分が悪いの?」と野中さんは中村さんの背をさすってやりながら尋ねた。けれども、中村さんは「ちがいます」とかぶりを振る。
なら、どうしたのだろうと店長と野中さんは顔を見合わせる。
「実は」と、中村さんは泣きそうになりながら声を絞り出した。
「弟がいまして」
「大変です大変です店長! 魔女子ちゃんが有馬さん以外の男連れてきてます!」
箒とチリトリとビニールを携え飛び込んできた山口君は中村さんの言葉にかぶせて言った。
一応、割れた陶器は従業員の義務として片付けてきたらしい。
が、その点をほめる余裕などあるはずもなく店長と野中さんは揃って「は!?」と声をあげたのである。
「なになになにそれどういうこと山口君」
「知りませんよ、俺は!」
野中さんに詰め寄られた山口君は、情けなく後退する。
「今すぐ調べてこないと給料カットだから! ね、店長!」
「うん、それは考慮しておこう」
「いや、どういうことっすか!」
問答無用で給料をカットされる危機に陥った山口君は、詰め寄る二人と出口を見比べて、外聞気にせず突撃質問をしに行くか激しく迷った。
けれど、それも一瞬のことだったのである。
疑問はあっさりと解決された。
「それ、私の弟だったんです!」
叫んで、わっと顔を覆った中村さんに、一同は驚愕した。
「有馬さんから魔女子ちゃんを奪うなんて! 俊の奴! 帰ったらとっちめてやる!」
夏休みも終わりに近い平和な午後。
姉の嘆きは、とある商店街にある喫茶店の事務所にこだましたのである。
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