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だららんのそのそのほほん日記
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無い時間帯に来てしまった方、もし、いらっしゃったら、本当に申し訳ありませんでした><!

せめてものお詫びに、ちょっとしたSSを追記にしたので、よかったらどうぞ。
10話と11話の間に起こった平和な出来事の一部。

久々のガーレリデス目線。実は、こっちのが書きやすかったりします。


彼の名は

「ガーレリデス様!」
 その時の彼女は、今までになく朗らかな笑みを湛えていた。
 いつもの笑みが可憐で小さな白い花だとすれば、その時の笑みはまさしく陽光に照らされて咲き誇る薄桃の花。
 頬を紅潮させて喜ぶ彼女の姿は実感の湧かない俺にとっては酷く不思議だった。
「名を……名を考えなければなりませんね」
「気が早すぎるだろう」
 侍医からトゥーアナが懐妊したとの報せが入ったのはつい先程ことだ。
「それよりも、大丈夫なのか? 体の調子が悪かったのだから見てもらったのだろう」
「ええ、平気です。それよりも嬉しくて」
 愛おしそうに腹部を撫でるトゥーアナを抱き上げる。
「とりあえず横になった方がいいんじゃないか? まだ微熱があるようだ」
「大丈夫ですよ。それも症状の一つだそうです。今、ちょうど二ヶ月に入ったところで、吐き気がしたのも、少し早いけどつわりが始まっただけだそうです」
「そうか。それなら良かった。だが、気をつけないと。不思議だがもうトゥーアナだけの体ではないんだろう?」
「ええ、分かっています。どんなことがあろうとも貴方の子だけは守ります」
 すでに母の顔になっているのだろうか。トゥーアナの表情には強い意志が覗く。
 だが――――――
「トゥーアナ、自身のことも守ってもらわなくては困る」
 彼女は意味を咀嚼するように一度キョトンとしたが、すぐにその紫の瞳を細めて頷いた。
「ええ、できうる限り」
 いつもよりも少し熱のある口付けが額に落ちる。
「―――私にこのような幸福まで与えて下さって有難うございました」
「礼を言うのなら俺の方だと思うのだが」
 彼女は「いいえ、私の方です」と言いながらも、嬉しそうにふわりと笑みを広げる。
 首へと腕を巻き付かせてきたトゥーアナが俺の耳元で囁く。
「ラルーと」
「ラルー?」
「ええ、“ラルー”と名付けてもよろしいでしょうか?」
 腕を巻きつけたまま、上体を起こしたトゥーアナが首を傾げる。その様子がおかしくて思わず声を立てて笑ってしまった。
「だから、気が早いと言っているのに。まだ、男か女かも分からないんだぞ?」
「おかしいでしょうか……?」
 紫の瞳が不安気に揺れる。
「いや、おかしくはないが……少し短すぎないか?」
「そうですね……。ケーアンリーブの方々は名がルメンディアよりも長いことが多いですから、王である貴方の子にはふさわしくないかもしれません……」
 半ば落胆してしまったように見えるトゥーアナの淡く光る金の髪を擦る。
「何か意味があるのか?」
「はい。“ラルー”はルメンディアで“陽の光”や“繁栄”を意味する名なのです」
 “陽の光”
 彼女が告げた意味が、この部屋に入って来た時に見たトゥーアナの笑みへの印象と一致していて、また不思議で温かな気持ちに包まれた。
「いい名だな」
「けれど、短すぎるとここではおかしいのではないでしょうか?」
 嬉しさの中にも戸惑いの交る表情へと首を振る。
「いや、まだ時間はあるんだ。この子が生まれるまでに“ラルー”にちなんだを二人で考えればいいだろう?」
「はい」
 
 
そうして生まれてきたのが、ラルシュベルグ。
“陽の光”の名を持つ俺とトゥーアナの息子。
その笑みが、存在が、陽の光のように輝くことを俺たちは願う。
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